調査研究報告

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3 歯科保健行動
 歯や口についての有訴内容について調査したところ,35.4%は現状態について「ほぼ満足している」と答え,55.4%は「やや不満であるが,日常生活には特に困らない」と回答した.「不自由や苦痛を感じている」と答える者は9%いた.
 「やや不満であるが,日常生活には特に困らない」と「不自由や苦痛を感じている」と回答した者について,次に具体的な症状について聞いたところ(複数回答),「食べ物が歯と歯の間にはさまる」と答えた者が最も多く(41.5%),次いで「口臭がある」(18.5%),「歯ぐきが腫れる,歯ぐきから血が出る」(13.8%)と回答する者が多かった(図3).
 かかりつけ歯科医を決めているかどうかについては,「決めている」と答えた者が83.0%を占めていた.また,定期的な歯科の健康診査の受診率については58.5%と保健福祉動向調査による全国平均の17.9% を大きく上回っており,歯や口に関する健康意識が高い傾向が示唆された.

4 食生活状況
 食事の人数について調べたところ,いつも一人で食事をしていると答えた者が20%いた.
 1日の食事の回数については,3回と答える者が最も多く(90.8%),次いで2回が9.2%であった.なお,食事回数が決まっていないと回答する者はいなかった.欠食については昼食と答える者が最も多く(6.2%),次いで夕食,朝食の順であった.
 食事摂取頻度について検討したところ(図4),主食である炭水化物の摂取を1日3回摂っている者は75.4%に対して,肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく性食品の摂取について1日3回摂っていると答える者は,26.2%と低かった.一方で,牛乳や乳製品についてはほぼ毎日摂っている者が81.5%と多かった.
 野菜類の摂取については41.5%が1日3回摂取していると回答したが,緑黄色野菜の摂取はやや低い傾向にあった(20%).果物や海草類については,1日1回と答える者が最も多かった.(果物は60%が1回,海草類は44.6%が1回).
 次に,サプリメントやいわゆる健康食品などを摂っているかどうかについて聞いたところ,61.5%の者が摂っていることがわかった.特に継続的に摂っていると答えた者は24.6%を占めていた(図5).

5 社会活動への参加状況
 長寿大学の他にもボランティアや自治会等など社会活動への取り組みについて聞いたところ,89.2%が参加していると答え,社会活動への関わりの意識が強いことが示唆された.

考察

 今回我々は,元気高齢者の口腔健康状態および食生活の実態を把握するために長寿大学に在籍している高齢者を対象に食事と口腔衛生および社会活動との関係について調査を実施した.
 8020運動が推進されて10年余り経過しているが,依然として目標値には達していない.しかしながら,積極的に社会活動に参加している高齢者は,全国平均に比べて残存歯牙が多く,口腔清掃状態も比較的良好であった.また,喪失歯に対して義歯などの補綴処置をきちんと行っている者が多く,
補綴に関する自覚症状も少なく,補綴を専門とする歯科医師による診査においても要補綴者が少なかった.
 口腔清掃状態については,今回はCandida の菌数を指標に評価したが,視診による評価とほぼ一致しており,口腔衛生状態が良好な者が多くみられた.これは普段のセルフケアはもちろんのこと,かかりつけ歯科医を決めている割合が多い点,また,定期的に健康診査を受けていることも一因ではないかと示唆される.さらに地域社会への積極的な参加も関係していることも考えられる.
 食生活については,欠食が非常に少なく,ほとんどの者が三食規則正しく摂っていることがわかった.しかしながら,いわゆる「孤食」の割合が高いという問題点が指摘された.
 食事摂取頻度による調査では,主食を中心とした糖質はしっかりと摂取しているもののたんぱく性食品の摂取が著しく低く,牛乳やサプリメント等で補う傾向が示唆された.野菜類についてはやや摂取頻度が多いものの,緑黄色野菜や海草類等の摂取頻度が低いことが推測された.
 健康に対する意識が強いことの表れか,サプリメントやいわゆる健康食品に対する関心が高く,継続に摂取している者が多く,通常の食事のみではカバーしきれないミネラルやビタミン類を栄養補助食品で補う姿勢がみられた.
 社会活動については長寿大学以外のボランティア活動や勉強会,自治会等へ積極的に参加している者が多く,社会参加への意識が強い傾向が示唆された.

結語

 社会活動の参加意識が強い高齢者は.健康意識が高く.特に摂食に関わる口腔の健康への関心が強いことが示唆された.食生活については.規則正しい食事やカルシウムや野菜などの栄養については意識しているものの.たんぱく質の摂取や緑黄色野菜等の意識がやや弱いことが推測される.また.孤食の割合が多いことから.単に栄養面だけでなく.食事を楽しむといった面にも配慮した栄養指導・食事指導が必要であると考えられた.

謝辞

 本調査研究にご協力いただきました対象の方々および,長寿大学の関係者の方々に厚く御礼申し上げます.また本研究を進めるにあたり,北海道食品科学技術振興財団より研究援助金のご提供をいただき,ここに厚く感謝申し上げます.

参考文献

財団法人厚生統計協会 国民衛生の動向2004(2004)
松下拡 他:健康日本21と地域保険計画(2003),勁草書房
日本栄養士会 編:健康日本21と栄養士活動(2002),第一出版
健康増進法研究会 監修:速報健康増進法(2002),中央法規
歯科保健医療研究会 監修:2004年版歯科保健指導関係資料(2004),財団法人 口腔保健協会
植松宏 他:高齢者歯科ガイドブック(2003),医歯薬出版株式会社
寺岡加代 他:高齢者における摂食機能の身体活動への影響,口腔衛生学会誌(42),2-6,1992
寺岡加代 他:高齢者の咀嚼能力と身体活動性および生活機能との関連性について,口腔衛生学会誌(44),653-658,1994
歯科保健医療研究会 監修:2004年版歯科保健指導関係資料(2004),財団法人 口腔保健協会
駒井正 他:口腔カンジダ症とカンジダ用簡易液体培地について,歯界展望,(62)3,539-546,1983
瀧口徹 他:介護保険対応型歯科保健・医療ガイドブック(1999),永末書店





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