調査研究報告書

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  北海道文教大学 人間科学部 健康栄養学科 講師/小原 効
                       助手/新井田 洋子・清水 千晶・安田 直美


緒 言

 近年,我が国では急速に高齢化が進行し,平成15年統計では老年人口が19.0%となり,超高齢化社会が到来すると見込まれている.また,急速な人口の高齢化に伴って,その疾病構造は変化し,悪性新生物,心疾患,糖尿病,歯周病等の生活習慣病が増加し,要介護高齢者の増加をもたらすなどの深刻な社会問題となっている.高齢者の場合,摂食の観点からみると,他の年齢層に比べて健康意識が高いものの,歯牙の喪失が著しく,味覚や唾液分泌能の低下,また咀嚼・嚥下能力の障害が指摘されている.さらに慢性の基礎疾患を有している場合が多く,そのことが口腔衛生状態や摂食機能,食生活だけではなく,社会活動への参加,QOLやADLにも影響を及ぼしていることが考えられる.
 厚生労働省では平成12年より「健康日本21」や「ゴールドプラン21」に基づき,活力ある高齢者像を掲げて,「ヤングオールドづくり」の推進を図っている.しかしながら,身体活動の高い高齢者の口腔状態や摂食機能を含めた食生活に関する報告は少なく,公衆衛生や臨床の現場などの保健指導や健康教育への反映が未だ不十分である.
以上を踏まえて,道内にある地域の長寿大学に在籍する元気高齢者を対象として,口腔状態,摂食機能,食事形態調査,社会活動性の調査を実施し,摂食・食生活を含めた生活習慣と,生きがいや社会活動性との関連性について比較検討を行った.そこで興味深い結果が得られたのでここに報告する.

研究方法

1. 調査対象
 道内にあるE市の長寿大学に在籍する65歳以上の高齢者を対象に調査を行った.なお,調査に先立って調査の目的・主旨の説明会を3回設け,同意書にて調査の協力を得たものとした.最終的には65名の高齢者(男性34名・女性31名,平均年齢70.9歳)であった.調査時期は,2004年6月である.

2.調査方法
(1)口腔内診査
 口腔内診査については老人保健法による歯周疾患検診マニュアルに準じ,歯科医師が行った.なお,現在歯数には第三大臼歯も対象歯に含めた.また,喪失歯のうち義歯等による欠損補綴処置が必要と判断できるものを要補綴歯とした.ただし,補綴処置が施されているものであっても一部破損していたり,欠損部の状況と著しく異なる義歯は装着していないものと判断し,要補綴歯とした.

(2)カンジダ培養試験
 カンジダ培養試験は,ストマスタット(三金工業株式会社,栃木県)を用いた.すなわち,対象者の舌背中央部を滅菌綿棒にて擦過し,ストマスタットに接種し,恒温器(37℃)にて24時間培養後,アンプルの色調変化をもって観察した.すなわちその色調がpH5.0以下で黄色に変化したものをCandida albicans陽性として判定した.

(3)歯科保健行動調査・社会活動性の調査
 歯科保健行動調査は,歯や口に関する自覚症状について,かかりつけ歯科医を決めているか,定期検診の受診状況の3点について自記式質問紙調査により回答を得た.口腔内診査を受けた者全員に記入させ,最後に記入状況を点検するとともに,記入漏れ等の不備の点については面接にて是正した.
 社会活動性の調査は,地域の社会活動の参加状況について自記式質問紙調査により回答を得た.

食生活状況調査
 食生活状況調査は,歯科保健行動調査と同時に実施した.食生活の調査については,食事の摂取量,欠食状況,摂取頻度を把握すべくアンケート方式により厚生省栄養課編の「成人一般向け食習慣調査」を用いた.回答後は管理栄養士が記入状況を点検するとともに,不備な点の是正や記入要領の指導を行った. 

結 果

1 現在歯および喪失歯の状況(図1)
 長寿大大学に在籍する高齢者の一人平均現在歯数は,17.5本で,DMFT指数(一人平均DMF歯数)は20.7であった.平成11年歯科疾患実態調査における全国平均では,DMFT指数が23.9であることからDMFT指数が低いことがわかった.特に一人平均喪失歯数でみると,全国平均が19.1本に対し,今回の調査では10.5本と低いことから現在歯が多いことも示された.
 なお,DMFT指数のうち一人平均未処置歯数は0.6本と少なかった.

2 口腔清掃状態の評価
 口腔清掃状態の評価は,今回の調査では対象者が高齢者であることから口腔内のCandida albicansの菌数を指標に,ストマスタットを用いて評価を行った.結果は図2に示すように,Low levelの者の割合が多く,概ね口腔衛生状態が良好であることが示された.また,我々が前年度報告した介護老人福祉施設の入所者と比較しても口腔Candidaが少ないことが認められた.
 介護老人福祉施設の入所者の場合は,無歯顎者と比較して残存歯をもつ者のほうが有意に口腔内にCandidaが増加しており,口腔衛生状態が不良であったが,長寿大学に在籍している高齢者の場合で同様の検討を試みたところ,その差は認められなかった(データ省略).





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