調査研究報告書

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2. 亜鉛およびたんぱく質の出納
 試験期間終了時5日分の糞中亜鉛およびたんぱく質と摂食飼料中の亜鉛量とたんぱく質量から、みかけの亜鉛およびたんぱく質の吸収量と吸収率を算出した。その結果を表4に示した。亜鉛の吸収量は、たんぱく質レベル、亜鉛レベルの増加によりそれぞれ有意に増加した。また、有意な交互作用もみられた(p<0.01)。吸収率についても、たんぱく質レベル、亜鉛レベルにより有意な差が認められ、交互作用もみられた(p<0.0001)。標準たんぱく質レベルでは、飼料中亜鉛レベルが増加するのに伴い吸収率は低下したのに対し、低たんぱく質レベルでは、飼料中亜鉛量を増加させると吸収率が若干増加した。飼料中亜鉛レベルが低い場合、たんぱく質の添加は亜鉛の吸収率を有意に上昇させることが示された。

  みかけのたんぱく質の吸収率には、飼料中たんぱく質レベルおよび亜鉛レベルによって有意な差が認められた。たんぱく質レベルが高い程、たんぱく質の吸収率が高く、また、同たんぱく質レベル内では、飼料中亜鉛含量が増加する程たんぱく質の吸収率は低下した。

3. 血清中の亜鉛およびアルブミン濃度
 各群の栄養状態を確認するために、血清中の亜鉛濃度およびアルブミン濃度を測定した。それらの結果を図1に示す。アルブミン濃度は、飼料中のたんぱく質レベルにのみ依存し(p<0.001)、飼料中亜鉛量には影響されなかった(図1-1)。血清中亜鉛濃度は(図1-2)、飼料中たんぱく質レベル、亜鉛レベルのどちらによっても差があり、さらに両レベルによる交互作用も有意に生じていた。

 しかしながら、低たんぱく質群 内では、亜鉛レベルの影響は認められないが、標準たんぱく質群内では、亜鉛レベルの増加により、血清中亜鉛濃度が有意に増加した。さらに、血清中の亜鉛の一部は、アルブミンに結合していることが知られているので、アルブミンあたりの亜鉛量についても算出して比較した(図1-3)。たんぱく質、亜鉛、両レベルにより有意な差がみられ、さらに交互作用も認められた。標準たんぱく質群内のみで、亜鉛レベルによる差が生じた。また、5mg/kg亜鉛群内で、低たんぱく質群と標準たんぱく質群に有意な差はみられなかった。

4. 胸腺Tリンパ球のサブポピュレーション
 胸腺内Tリンパ球の分化に対し、飼料中のたんぱく質と亜鉛のレベルはどのような相互作用を示すかについて検討を行った。結果を表5に示す。胸腺内のTリンパ球は、
  ダブルネガティブ(DN)→ダブルポジティブ(DP)
  →シングルポジティブ、CD4+CD8-あるいはCD4-CD8+(SP)と分化する。
 今回の条件においては、DNの割合が低たんぱく質で高く(有意差はなし)、DPの割合が低たんぱく質では減少していた。亜鉛レベルによる影響はみられなかった。、CD4-CD8+の割合においては、標準たんぱく質群で有意に低下していた。どのサブポピュレーションでも交互作用は認められなかった。

5. 脾臓リンパ球の増殖能
 ConAにより刺激した際の、リンパ球の応答について検討した結果を表6に示す。脾臓リンパ球の応答は、低たんぱく質群で、有意に低下していた(p<0.006)。標準たんぱく質群内では、5mg/kg群のみが有意に低下していた。

6. 血清中コルチコステロン濃度
 亜鉛欠乏時における免疫応答の低下は、亜鉛欠乏によって引き起こされる血清中コルチコステロン濃度の上昇により、リンパ球がアポトーシスを起こすためであるとされている6)。そこで、飼料中のたんぱく質および亜鉛のレベルが血清中コルチコステロン濃度におよぼす影響を確認した。その結果を表7に示す。血清中コルチコステロン濃度は、群内の差が大きく、たんぱく質レベルおよび亜鉛レベルによる変動は認められなかった。

まとめ

 本研究の飼料中亜鉛含量の設定は、severe deficiencyとして5mg/kg、 marginal deficiencyとして10mg/kg、 およびadequateとして30mg/kgとした。marginal deficiencyは、成長遅延は認められない程度の欠乏の状態と定義している。今回の設定のmarginal deficiencyは、十分量の亜鉛含量飼料群と同程度の体重増加量であったが、血清中亜鉛濃度は有意な差が生じていた。しかしながら、体重増加量が有意に低下していた低たんぱく質群では、飼料中亜鉛含量を増加させたとき、みかけの吸収量は増加したが、血清中の亜鉛量は変動がみられず、また、胸腺T細胞の分化や、脾臓リンパ球の増殖応答においても、たんぱく栄養の優先が観察された。このことは、亜鉛の欠乏が予測されるとき、たんぱく質不足であると亜鉛を単独に摂取しても血中亜鉛濃度が上がらないとともに、細胞免疫の機能の改善には至らないことが推測される。

謝 辞

 本研究は、の調査・研究助成金により行うことができました。ここに厚くお礼申し上げます。

参考文献

1). 国民栄養の現状、第一出版 
2). Fraker, P. J., Gershwin, M. E., Good, R. A. and Prasad, A. (1986) Interrelationships between zinc and
 immune function. Fed. Proc. 45: 1474-1479.
3). Keen, C. L. and Gershwin, M. E. (1990) Zinc deficiency and Immune function. Annu. Rev. Nutr.
 10: 415-431.
4). Rink, L. and Kirchner, H. (2000) Zinc- altered immune function and cytokine production. J. Nutr.
 130: 1407S-1411S.
5). Gerald, T. K., Immune function in malnutrished host. Pediatr. Ann 11: 1004-1014, 1982.
6). King, L. E., Osati-Ashtiani, F. and Fraker, P. J. (2002) Apoptosis play a distinct role of precursor
 lymphocytes during zinc deficiency in mice. J. Nutr. 132: 974-979, 2002.





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